2010年6月25日金曜日

レスなど。

※お知らせ(再掲)※
次回ウルジャンの銃夢LOは休載します。
再開は未定です。
理由はお手数ですが、ゆきと帳の過去の書きこみを参照してください。
※新装版「銃夢」について※
本文の内容は「銃夢 完全版」と同じとなります。
ヤングジャンプコミックス版「銃夢」9巻ラスト部分(大戦中の機甲術部隊の回想〜ザレム墜落)は「完全版」同様カットされ、「銃夢LO」につながるようになっています。
「完全版」に収録されていた「銃夢外伝」、巻末のスケッチ、付録DVDはありません。
描き下ろし部分は各巻のカバーのみです。
1巻冒頭のみ、連載当時の2色ページが再現されています。
カバー下の表紙には昔の銃夢の見開きカバーイラストが使われています。(1巻〜7巻まで)
デザイナーの意図により、本来なら断ち切られる部分まで印刷されています。
セリフが規制により、一部変更されている箇所があります。(詳しくはゆきと帳の過去の書きこみを参照)

>銃夢BBS
>狂博士さん
>いや毎月新装版が出る予定もストップされるのかな

新装版は全巻出ます。

>ミサイルライダーさん
>という事はやはりゆきと先生の譲れない部分を
>通したって事でしょうか

違います。
今回の休載〜再開未定はGLO100回号の原稿を上げたときから集英社に言っていたことで、過去の書きこみからなにも進展はありません。
この告知は一番最初にゆきと帳に書きこむべきでしたが、遅れてしまってすいません。

>鋼鉄の男さん
> そこで質問なんですが木城先生はかつて本格的にデッサン等をどこかで学ばれ
> たのですか?
> それとも独学で天才的なデッサン力を手に入れられたのですか?
> どのようにすれば、どんなアングルからでも、どんなシーンでも描くことので
> きるデッサン力を鍛えられるのでしょうか?

昔専門学校に行っていたとき少し授業に出ましたが、すぐにサボるようになって中退してしまったので勉強はできませんでした。悔やまれます。
僕は天才ではありませんよ。「ゆきとクロニクル」に載っている僕の子供のころの絵を見ればわかりますし、今でもしょっちゅうデッサンが狂うし左右対称の物をうまく描けないし…。

「どうすればデッサン力を鍛えられるか?」という質問ですが、近道はありません。
とにかくたくさんいろんなポーズを描くことです。
実物をクロッキーできれば一番いいですが、なければ写真などを見て描きます。

デッサンの練習は、次の三つのテーマがあります。
1.鉛筆を持つ手を思い通りに動かせるように訓練する。
2.対象を観察し、光の陰影、表面のテクスチャー、服のしわなどの動き、筋肉の付き方、など現実のさまざまな形を学習し、自分のライブラリーとする。
3.フォルムの持つ力の流れ、緊張感や安定感などを把握する。

このうち生き生きとした動きのある絵を描くために一番大切なのが3番のフォルムを把握する力で、1番が肉体的訓練、2番が観察と記憶だとすると3番は脳による立体的認識力または構成力ということになります。
ふつうの人は1番2番まではすぐにわかると思いますが、なかなか3番を理解するのは難しいかもしれません。
それでもデッサンやクロッキーを何十枚、何百枚とやっているうちにだんだんわかってきます。
すぐには上達はしないでしょう。
僕の場合、ある特定のテーマでデッサンの練習をして、その効果が現実に現れるまで1〜2年かかりました(二十歳前後のころ)。

フォルムを把握する能力が向上すると、描く対象を頭の中だけで立体的に構築して、(3DCGみたいに)くるくる回してみることができるようになります。
もちろん市販されているデッサン人形を使うのも一つの手です。

がんばってください。

2010年6月24日木曜日

レスと最近やったゲームの感想など

ご心配おかけしています。
事態の進展はないです。ここ最近は現実逃避でゲームばっかりやっています。
このまま非建設的な生活態度をとっていると腐るような気がするので、家の掃除や模様替えでもやってみようかと思っています。

あ、ちゃんと告知していなかったので書いておきます。

※お知らせ※
次回ウルジャンの銃夢LOは休載します。
再開は未定です。
理由はお手数ですが、ゆきと帳の過去の書きこみを参照してください。
※新装版「銃夢」について※
本文の内容は「銃夢 完全版」と同じとなります。
ヤングジャンプコミックス版「銃夢」9巻ラスト部分(大戦中の機甲術部隊の回想〜ザレム墜落)は「完全版」同様カットされ、「銃夢LO」につながるようになっています。
「完全版」に収録されていた「銃夢外伝」、巻末のスケッチ、付録DVDはありません。
描き下ろし部分は各巻のカバーのみです。
1巻冒頭のみ、連載当時の2色ページが再現されています。
カバー下の表紙には昔の銃夢の見開きカバーイラストが使われています。(1巻〜7巻まで)
デザイナーの意図により、本来なら断ち切られる部分まで印刷されています。
セリフが規制により、一部変更されている箇所があります。(詳しくはゆきと帳の過去の書きこみを参照)

>銃夢BBS
>kawamura君
> これを言うとゆきとさんは嫌かもしれないけれど、いつか「もうひとつの
> 銃夢」として昔の完結話も巻末に載せてほしいなー……。
> 豪華版DVDにもスペシャルディスクで「もうひとつのエンディング」が付く
> みたいに……
> あれ、うれしいんですよ。思索が広がって。
> そして小説版もコラムみたいにくっつかないかなあ。

なるほど、川村君としては珍しく建設的な意見ですね。
リニアな紙の本では難しいけど、電子書籍ならメニューから並列的に各コンテンツに飛ぶようにすることはできるはずだから、そういうのもアリかもしれないな。
もしチャンスがあったら、考えてみます。


さて、最近やったゲームの感想などを書こうと思います。
なんか銃夢BBSのゲームのスレッドが荒れているみたいだったので、ここでゲームの感想なんか書いたらまた荒れるんじゃないかと思って、タイミングを見計らってた。
まったくお前ら、仲良くしろよ。(特に川村君)
つーちゃんの仲裁が入ったので、感想書きます。

・「北斗無双」コーエー/Xbox360
ご存じ「北斗の拳」をコーエーの無双シリーズのシステムで作ったアクションゲーム。
「ゲームやる時間がない」と言いながら、「北斗無双」は少しずつやってた。
元々無双シリーズは時間がかかるゲームなので、まだ全キャラ解放してない。

原作のファンとしては、原哲夫先生の絵をさらにリアルにしたようなキャラがリアルタイムで動く様は感動モノ。
主人公のケンシロウだけでなく、レイやマミヤさん、ジャギまでプレイできるとあれば、原作ファンならば絶対にやらねばならんゲームといえるだろう。
原作のストーリーをなぞる「伝説編」のほか、オリジナルのストーリーが展開する「幻闘編」というモードがあり、このオリジナルストーリーが原作ファンも納得のIFの世界となっていて面白かった。
特にシンのストーリーなどは感動的だった。
有料ダウンロードコンテンツだが、「ハート様」やモヒカンの雑魚「無法者」をプレイヤーキャラとして使うことができる。
「ヒャッハー!!水はどこだ〜!!」と叫びながら荒野を駆け回る、という北斗ファン長年の夢を叶えてくれたコーエー様にはありがとうございます、と言いたい。

一方で、ゲームとしていろいろ惜しい部分があるのも事実。
まず、主人公のケンシロウが全キャラの中で一番使いづらいというのはどうにかしてほしいところ。
「暗殺拳」という設定上、単体の敵相手の技が多いというスタイルになるのはしようがないともいえるが、もっとコンビネーションを見えないぐらいに速くするとか、攻撃力を主人公補正して雑魚ぐらいはサクサク殺せるようにしてほしい。
格闘ゲームではないので、ケンシロウが強すぎるからといって文句を言う客はまずいないと思う。
それから「伝説編」のラスボスは画面に表示されるボタンを素早く入力してフィニッシュ、というシステムなんだけど、これ必要なのかな。
はっきり言って僕には難しすぎ。これのためにラオウをどうしても倒せない。
このゲームは全体的に難易度が高めで、中ボスも硬くて苦労するけど、それらはなんとか工夫して対処する方法があるが、このキー入力だけは対処のしようがない。
難易度を下げてもキー入力の難易度は下がらないので、どうしようもない。
このシステム自体なくすか、難易度を下げることでキー入力も易しくなるようにしてほしい。

あと細かい点だが、たまにステージにころがっているバイクが使いづらすぎて役に立ってない。
停止した状態で方向転換ができないため、まったく使い物にならない。
マックスターン(前輪をロックした状態で後輪を空転させて方向転換するテクニック)ぐらいできるようにしてほしい。
崖を登るときいちいちボタンを押さずに登れるようにしてほしい。
成長パラメーターを上げたいだけでもいちいちステージ選択しなければならないインターフェースをどうにかしてほしい。
ロードが長すぎ。

などいろいろありますが、けっこう売れたみたいなので、コーエーさんには上記の点を改善して登場キャラを増やした続編を期待しています。
僕が続編で絶対に出してほしいのは「ゴッドランド編」のマッドサージとカーネル、「ジャッカル編」のジャッカル、フォックス、デビルリバース(笑)、五車星の風のヒューイ、炎のシュレン、海のリハク(リハクが海の拳法を使うというのはアニメオリジナルだっけ…)etc…
あまり無茶言ってもしようがないけど、プレイアブルキャラとして南斗六聖拳全員と、五車星全員は使えるようになると嬉しいなあ。

・「ゴッド・オブ・ウォー3」SCEA/PS3
いやすごかった。
正直PS3には本体買ってまでやりたいと思わせるソフトがずっとなかったのですが、1作目からのファンである「ゴッド・オブ・ウォー」シリーズ最新作とあって、このためだけにPS3買いました。

ソフト立ち上げてからのオープニングデモからしてすでに超大作映画のオープニングそのもの。
70年代以前の歴史物みたいな様式化されたイラストレーションとナレーションでこれまでのいきさつを語るんだけど、完璧な演出で完成された体験を作り出している。
そこに「ゲームだから中途半端でもしょうがない」という甘えは一切なく、映画に匹敵する、あるいはそれを超える総合芸術を作ろうという志向を感じた。
そしてそれはかなりの完成度で成功していると思う。
僕は以前から、「実写映画化してほしいゲーム」第一位に「ゴッド・オブ・ウォー」を上げているが、ここまでのものを作られると、実写映画化のハードルはものすごく高いだろう。

さて、今回でも主人公クレイトスは遠慮容赦なく暴れ回ります。
まず冒頭でポセイドンを撲殺し、ヘリオスの首を引きちぎり、ヘルメスの両足をぶった斬り、ハデスとヘラとクロノスをぶっ殺し、異母兄弟のヘラクレスも撲殺し裏切ったガイアも殺害。(ヘファイストスはかわいそうだったな…。)
最後に宿敵ゼウスを惨殺。
てあたりしだいに神々を殺害しまくったために世界は大災害に襲われ、メチャクチャに。
この残虐描写のために日本ではZ指定ですが、牧歌的なイメージだったギリシャ神話の世界を現代的なエッジで再構築して見せたこの世界は多くの日本の人達にも味わってもらいたいです。

・「ゴーストトリック」カプコン/ニンテンドーDS
記憶を失った死者となった主人公が、「物にとりつく/操る」「死の4分前に戻る」という能力を駆使して自分の死の真相を追求していくという推理・パズルゲーム。

僕のDSの稼働率は最近はきわめて低くて、「超常現象リサーチファイル」をクリアしてからは時々「カルドセプトDS」を思い出したようにやるぐらい。
そこに久々にやってみたいと思えるゲームが出たので、購入してやってみた。
クリアするまで2日ぐらいだったけど、その間はすごく楽しかった。
強烈に感動した、とかそういうのはないし、やりこみ要素もないけど、やってるあいだは楽しかったしなんというか癒された。
うん、「ゴッド・オブ・ウォー3」みたいなコテコテのフルコースもいいけどこういう小品も悪くないです。

2010年6月17日木曜日

読者の皆さんへ報告(3)とレス

昨日(16日)、東京の集英社に出向いて話してきました。
東京は人が多くて暑くてつかれた…。
結論からいうと何も動きはありません。
担当とUJ編集長と副編による謝罪と、法務部の人間二人による「ご説明」。
すべて事前に予測したシナリオ通りです。いわば儀式みたいなもん。

法務部の人は、集英社の差別的用語撤廃の取り組みの歴史を語るときは実に雄弁でした(これはこれで興味深い話だった。…今みたいな非常事態の時でなければ)。
が、具体的な今回の銃夢新装版の修正の部分にかかると論理的に矛盾しまくり。
僕は何度も相手の矛盾点をついて論破したが、相手は論破されたと思っていないだろう。
なぜならこれははじめからフェアな議論ではないから。
「結論」はすでにできていて、それに適当な理屈を並べているにすぎない。
集英社は絶対に「結論」を変えないし、間違っていました、と謝ることもない。
そして僕はすでに負けている。
新装版の修正に応じたときから負けている。
だからこれはすべて茶番。茶番だと分かっていてつきあってやった。
相手の顔は立ててやんないとな。

16日の会合では「今日は何も決定しないし、何も約束しない」と公言して臨みました。
そのため現在のところ、集英社でこのまま仕事を続けるか、それともほかの選択肢をとるか、まだ何も決定していません。


>銃夢BBSのレス
>タンニさん
>ということはクズ鉄町はアメリカのどこかなんでしょうか?

タンニさんゲートウェイアーチに行ったことあるんですか〜。
僕はゲートウェイアーチは文明復興編で資料あさりをするまで存在を知りませんでした。
クズ鉄町は現在のカンザスシティのあたりです。
文明復興編最後の方では温暖化による海面上昇で、北アメリカ大陸の東側は水没して巨大な内海になっています(晩年のアーサーの紋章に当時の世界地図があしらわれています)。
その後海面が下がり、現在の姿になりました。

>ミサイルライダーさん
> ゆきと先生が積みゲーの中で今一番プレイしたい、まだ
> 発売してない作品ならプレイしてみたい!
> というゲームはなんでしょうか?

「ゴッド・オブ・ウォー3」です。
このために新型PS3も数ヶ月前から用意してあったんですが、まだ一回しか電源入れてません。
突然時間ができてしまったので、これからやってみようと思います。

2010年6月15日火曜日

読者の皆さんへお願い

応援してくれている皆さん、ありがとうございます。
ひとつお願いがあります。
BBSなどで自由に意見を表明するのはかまいませんが、UJの他作品をあげつらうのは遠慮していただきたい。
変なところに飛び火させたくないのです。
今回問題とされた表現規制はすべてのマンガ家にかかわりあることですが、僕は全マンガ家の代表ではありません。
今回の件はあくまで僕と集英社のあいだの問題です。
ほかの作家さんは関係ありません。
よろしくお願いします。

2010年6月14日月曜日

読者の皆さんへ報告(2)

ご心配をおかけしています。
昨夜の続きです。

ふつうこういった重大な用件の場合、記録に残るようにFAXやメールでやりとりするようにしているのですが、今回は時間がなかったため、テキストとして残っているのは前回引用したメールだけです。
このあとは直接電話での応対となったため、内容を完全に再現するのは少しむずかしいです。

「発狂」という言葉が不適切表現とされたことについて、僕が一番懸念したのはノヴァ教授にまつわるセリフや表現、「狂ってる」「狂気の一千の貌」などまで規制されるとしたら、それは絶対に飲むことはできない、ということでした。
その後編集部が出してきた問題箇所は3カ所(前回のメール文参照)で、懸念したノヴァ教授にまつわる部分はありません。
しかし逆に疑問が生まれます。
なぜ「狂ってる」「狂気」がO.Kで「発狂」がダメなのか。
その疑問を編集にぶつけ、なにやらごちゃごちゃ言ってましたがよく分かりませんでした。
あまりにアホらしくてここに書く気にもなりません。
編集長に至っては支離滅裂な説明であることを自分で白状する始末。

そして、重要な点は、この3点のセリフを修正することに僕が同意しなければ、「発行権」という出版社の権利を行使して、新装版の出版は中止することになる、という事です。
本来なら少し進行を止めて、時間をかけて協議するところですが、今回はその時間もない。
24時間以内に決定して校了しなければ印刷にまにあわない、というのです。

こっちはこっちで連載の仕事を進めている最中。
しかも連載100回目で、UJ表紙イラストも描き、絶対に休めない状況。
それなのに考える時間もない。

結果から言うと、僕はセリフ3点の修正に同意しました。
「あとから追加で修正箇所を増やすことはしない」という約束と引き替えに。
そして、銃夢LO第100回目の原稿は、〆切までにきちっと上げることを僕は約束しました。
ちゃんと期日までに原稿を上げる、約束は守る、それがいつも公言している僕のプロの矜持だからです。

しかし修正に同意してからも悶々と悩む日が続き、現在は後悔しています…。
やはり修正要求は毅然とはねつけるべきではなかったかと。
その結果新装版の刊行が中止となり、銃夢LO第100回目を落とすことになったとしても、そうするべきではなかったかと。
俺はプロとして期日を守ることを優先したが、表現者としては純粋ではなかったのではないかと。
俺が自分の作品の表現を守らなかったら、いったい誰がそれを守ってくれるのかと。
………
だけど、仮に修正に同意せずに新装版や銃夢LO第100回を落とす選択をしていたとしても、後悔していたと思う。
つまり、これはどちらを選んでも僕は後悔するようにできていたのです。
………

つまるところ、今回問題にされた言葉「発狂」と、O.Kとされた言葉「狂気」は漢字1文字の差なわけです。
「発」という字がついているかいないか。
僕は電話で担当編集に問いただしました。
「今このタイミングでこんな問題を持ち出してくるということは、最悪の場合新装版の刊行中止、銃夢LO100話を落とすことになるのも覚悟してのことなんでしょうね?」
担当編集はYESと答えました。
要するに「発がついているかいないか」という問題と「銃夢LO第100回記念と新装版刊行」が等価、同じ重さだということです。
………

16日に集英社に出向いて話をすることになっています。
僕としてはもう、たいして話すこともないのですが、なにか動きがあったらここで報告します。

読者の皆さんへ報告(1)

ご心配おかけしております。
先ほど、銃夢LO連載100回目の原稿を上げました。
ウルジャンは予定通り出ます。表紙はガリイ&陽子です。
ですが紙面の華やかさとは裏腹に僕の心はズダボロです。
101回目のGLOはないかも知れません。

事件の経緯を簡単に説明します。
原稿執筆真っ最中の6月7日夜に担当編集から電話があり、今月に発売される予定の旧「銃夢/新装版」1巻について、「セリフの一部に問題があるので修正したい」とのこと。
具体的には「“発狂”という言葉が統合失調症を連想させるので、別の言葉に直してほしい」という。
言うまでもありませんが、「銃夢」はすでに発売されている作品であり、なぜ今になってそんな事を言い出すのか分かりません。
その場で判断するには重大すぎることなので、「新装版全7巻中、問題になりそうなセリフをすべてピックアップして、それに対する代案もつけて提出してください。話はそれからだ」と言って時間を稼ぎました。

翌日、担当からメールが来ました。
了解は取ってあるので全文掲載します。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
木城ゆきと様

おつかれさまです。
昨日、電話でお話した件、送ります。
新装版全7巻収録分について、編集部で協議しました。
以下の3箇所について、ご相談させて下さい。

1:完全版1/P.33/デッキマンの台詞
  「犯人の女は発狂した突然変異(ミュータント)だったのか」

2:完全版4/P.161/ザパンの台詞
  「まちがってお前を殺してしまい…発狂した俺は怪物になって
   すべてに復讐しようとする夢だ…」

3:完全版3/P.324/ハンターウォリアーの台詞
  「死ね! サイコ野郎」

それぞれの理由と、言い換えの提案は以下の通りです。


1:「発狂」が統合失調症(かつての精神分裂病)をはじめとする精神障害と
  強く結びついてしまう言葉です。その「発狂」した人が暴力的で危険である
  という受け取り方をされる表現を、現在は避けているからです。
 
  法務からは「”発狂した”の一文をはずす」という提案もあったのですが、 
 全くニュアンスが変わってしまうので、別案を協議しました。
  「犯人の女は暴走した突然変異だったのか」
  「犯人の女は正気を失った突然変異だったのか」
  「犯人の女はおかしくなった突然変異だったのか」
  
  ここの台詞のニュアンスを考えると「暴走した」「正気を失った」が
  比較的近いと考えます。
  
 
2:「1」の理由と同様です。

  協議した案は以下の通りです。
  「まちがってお前を殺してしまい…正気を失った俺は怪物になって
   すべてに復讐しようとする夢だ…」
  「まちがってお前を殺してしまい…常軌を逸した俺は怪物になって
   すべてに復讐しようとする夢だ…」
  「まちがってお前を殺してしまい…おかしくなった俺は怪物になって
   すべてに復讐しようとする夢だ…」
  
  ザパンの置かれている状況を考えると「常軌を逸した」「正気を失った」が
  比較的近いと考えました。


3:「サイコパス」=「精神病質」を意味し、「共感や他者との結びつきを
  全く示さないと考えられており、他者を自分自身のために操作する、
  反社会的行動をする個人」などとされています。
  
  精神障害の大きな3分類「精神疾患」「知的障害」「精神病質」に含まれ、
  薬事療法も心理療法も受け付けない、治療不可能な障害とされています。
  それ故、サイコパス=何をするかわからない恐ろしい存在、という表現は
  避けるべきと考えています。

  協議した案は以下の通りです。
  「死ね! 変態野郎」
  「死ね! クズ野郎」
  「死ね! クソ野郎」
  
  いずれも言い換えの難しいニュアンスですが、提案として
  ご一読下さいませ。


スケジュールも含め、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
今晩、あらためてご連絡させていただきます。
よろしくお願いします。


集英社UJ編集部 井藤 涼
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

疲れたので続きは明日書きます。

2010年6月10日木曜日

悔しくて眠れないので愚痴を書く。

少し前に「ブラよろ」の佐藤先生を批判するようなことを書いたけど、全面撤回する。
佐藤先生、あんたは正しい。大手出版社はクソだ。

同志と信じ切っている作家を後ろから殴り倒し、顔を土足で踏みにじるようなことを平気でやりやがった。
いつもなら反撃するが、今回は両手足を縛られたような状態で反撃する選択肢がなかった…。

なぜだ。こんな扱いを受けるいわれはないはずだ。
今年に入ってから好きなゲームも我慢して、毎月の連載の仕事を上げ新装版の表紙を上げ単行本の表紙と原稿を上げウルジャンの表紙を上げ、頼まれれば色紙も描き仕事場撮影も受け、すべての〆切を守った。
6月のGLO100回記念を目指して。
それで編集部からのプレゼントがこれか。
あんまりじゃないか。
理由は企業の「保身」か。
もしくは俺への悪意か。このタイミングの良さ(悪さ)には作為的なものを感じる。