昨夜の続きです。
ふつうこういった重大な用件の場合、記録に残るようにFAXやメールでやりとりするようにしているのですが、今回は時間がなかったため、テキストとして残っているのは前回引用したメールだけです。
このあとは直接電話での応対となったため、内容を完全に再現するのは少しむずかしいです。
「発狂」という言葉が不適切表現とされたことについて、僕が一番懸念したのはノヴァ教授にまつわるセリフや表現、「狂ってる」「狂気の一千の貌」などまで規制されるとしたら、それは絶対に飲むことはできない、ということでした。
その後編集部が出してきた問題箇所は3カ所(前回のメール文参照)で、懸念したノヴァ教授にまつわる部分はありません。
しかし逆に疑問が生まれます。
なぜ「狂ってる」「狂気」がO.Kで「発狂」がダメなのか。
その疑問を編集にぶつけ、なにやらごちゃごちゃ言ってましたがよく分かりませんでした。
あまりにアホらしくてここに書く気にもなりません。
編集長に至っては支離滅裂な説明であることを自分で白状する始末。
そして、重要な点は、この3点のセリフを修正することに僕が同意しなければ、「発行権」という出版社の権利を行使して、新装版の出版は中止することになる、という事です。
本来なら少し進行を止めて、時間をかけて協議するところですが、今回はその時間もない。
24時間以内に決定して校了しなければ印刷にまにあわない、というのです。
こっちはこっちで連載の仕事を進めている最中。
しかも連載100回目で、UJ表紙イラストも描き、絶対に休めない状況。
それなのに考える時間もない。
結果から言うと、僕はセリフ3点の修正に同意しました。
「あとから追加で修正箇所を増やすことはしない」という約束と引き替えに。
そして、銃夢LO第100回目の原稿は、〆切までにきちっと上げることを僕は約束しました。
ちゃんと期日までに原稿を上げる、約束は守る、それがいつも公言している僕のプロの矜持だからです。
しかし修正に同意してからも悶々と悩む日が続き、現在は後悔しています…。
やはり修正要求は毅然とはねつけるべきではなかったかと。
その結果新装版の刊行が中止となり、銃夢LO第100回目を落とすことになったとしても、そうするべきではなかったかと。
俺はプロとして期日を守ることを優先したが、表現者としては純粋ではなかったのではないかと。
俺が自分の作品の表現を守らなかったら、いったい誰がそれを守ってくれるのかと。
………
だけど、仮に修正に同意せずに新装版や銃夢LO第100回を落とす選択をしていたとしても、後悔していたと思う。
つまり、これはどちらを選んでも僕は後悔するようにできていたのです。
………
つまるところ、今回問題にされた言葉「発狂」と、O.Kとされた言葉「狂気」は漢字1文字の差なわけです。
「発」という字がついているかいないか。
僕は電話で担当編集に問いただしました。
「今このタイミングでこんな問題を持ち出してくるということは、最悪の場合新装版の刊行中止、銃夢LO100話を落とすことになるのも覚悟してのことなんでしょうね?」
担当編集はYESと答えました。
要するに「発がついているかいないか」という問題と「銃夢LO第100回記念と新装版刊行」が等価、同じ重さだということです。
………
16日に集英社に出向いて話をすることになっています。
僕としてはもう、たいして話すこともないのですが、なにか動きがあったらここで報告します。